第7章 迎え
「てめえ…っ!」
ダンテが歯軋りして駆けた。
が、ライアに容易くあしらわれ、吹っ飛ばされる。
「ぐっ…」
は、そんな事にはまるで気付きもしなかった。気付けるはずもない。
頭の中でライアの言葉が響いて、足元がぐらぐらした。
バランスを失って身体が傾くが、ライアがそれを優しく受け止める。
それを振り払うのも忘れて、はライアを見上げた。
───悪魔? 悪魔って…
悪魔って、なんだっけ。
なんだったっけ?
「何…言ってるの……冗談やめてよ!」
「冗談ではありません。彼は悪魔と人間の間に生まれました。少なくとも、人間じゃない」
人間じゃない。
まるで最後の一撃。
の膝が崩れた。
頭が痛い。身体が震える。
ダンテは絶望的な気分だった。
最悪だ。自分から言う前に、他人に言われてしまった。
の呆然とした顔が痛い。
───ダンテが…人間じゃない…?
何も見えなくなった中で、それだけがを支配していた。
脳裏に悪魔のイメージが浮かぶ。
人に災厄をもたらす存在。
堕天使。
罪を背負い、天から追放された者。
残酷で非道。
きれいな顔で人を騙す。
ダンテは、信じられないくらいに強くて。
綺麗で。
格好よくて。
遠くを見つめたようなの瞳。
ダンテの呼びかけも風のささやき。
ライアの腕にしがみついた手は、血の気をなくしていた。
あの声が。あの感触が。暖かさが。全てが。
蘇って、消えた。
───私…
目に熱いものがたまる。
鼻の奥がつんと痛くなる。
そして、見開かれたままの瞳から一筋。
濡れる。
ぷつりと、何かが途切れたように。
───私…騙されてたの?