第5章 風呂場の愛
「好きだ…」
もう一度言う。確かめるように。
は少し息を吸い。
「私もです」
泣き笑いで、今度こそはっきりと。
聞き間違えようもないくらいはっきりと、は言った。
「…っちくしょう! こんなに嬉しいこたねえぜ!」
たまらなくなったダンテはに、触れるだけの口付けをする。
柔らかいの唇。
するとは口付けは初めてだったようで、顔が一気に赤くなった。
それを見てダンテは最高の気分で笑う。
まるで、ようやく報われたような気分。解放されたような気分。
が悪魔に襲われて助けを求めて、その姿を見た時から捕らわれていた。
あの時、を助けたのが自分でよかったと、心から思う。
なんだったら神にでも感謝してやるぜ。
そしては 俺が。
俺が守る。
バージルは、バスルームのドアにもたれて腕を組んでいた。
ドアの向こうからダンテの歓喜の声が聞こえる。
悔しいとは思わなかった。
が選んだのだから、それで…
「それでいい」
そう、それでいい。この胸の痛みと傷みと苛立ちは、気にしなくていい。
が幸せなら。
笑顔が曇らずに済むのなら、それで。
バージルはゆっくりとその場を離れた。