第1章 終わらない帰り道
「あれ ちゃんもう帰るのー?」
「うん。じゃあねー」
「バイバーイ」
私の名前は。大学に通う1年生だ。
始めは緊張していた学校生活にもようやく慣れ、自分の好きな事もできて楽しい毎日を送っていた。
友達もいて両親もいて、帰る家もある。
何不自由ない生活。
ささいな悩みに時間をかけて生きる毎日。
一日の授業が終わった解放感に、は息をついた。
───昨日までバイトだったし、今日は早く帰ってやる事やらないと…
ここのところバイトが立て続けに入ってしまい、それと合わせるように出された課題。
できない量ではないが、ギリギリというところだろうか。
何にせよ、気は抜けない。
───全然…やってないんだよね……ヤバいよね。
考えているうちにどんどん不安になってきて、自然と歩調は速くなる。
歩きながら、帰ったらまず何から手をつけるべきかと頭の中で思った。
量が多いものから? それとも難しいものから?
いつもと同じ道。
いつもと同じ景色。
いつもと同じ日常。
秋風が吹きすさび冬の訪れを感じさせる空気の中、どうしたら課題を効率よく片付けられるか何度も頭の中でシミュレーションして。
しかし、は知らなかった。
それが今日で最後なのだという事を。