第21章 手招き
手を握り締める。
震えている。
いつもあったものが突然消えた。消える事を望んでいたいないは関係なしに、何か不安になった。
宙に放り出されたような。ずっと一緒に住んでいた人に、明日から一人で生きていけと言われたような。
恐怖に似た不安。
痛い程に望んだ事なのに。
「ライア…」
呟きに顔を上げる。
ああ、そうだ。一人ではなかった。
の左手にある指輪が光って、それに何だか救われた。
つけてくれている。
はずさないでいてくれている。
は笑っていた。ライアが一番好きな笑顔で。
そして温かく、手招きを。
拒絶する理由がどこにある?
こんなにも身勝手な事をしてしまった私を尚もまた掬って救ってくれる。
何度でも助けてもらえるかもしれないと、思ってしまう。
いいんですか?
一度裏切ってしまった身。簡単に戻れる程、私の神経は図太くない。
戻れたらどんなにいいでしょう。
不安の元が消えたこの自由な身体で、遠慮なく貴女に触れられたら、どんなに。
どんなに幸せでしょうね。