第18章 3メートル
翌日、の風邪は良くなるどころか悪化していた。
昨日はあのあと夕食もまともにとらずすぐに寝てしまい、3人は心配で仕方のない夜を過ごしていた。
朝、バージルが起きて、ライアが起きて、もうそろそろ朝とは呼べないような時間。
なのに、いつもならとっくに降りてきているはずのが降りてこない。
キッチンにいたバージルとライアは顔を見合わせた。
ここのところ、二人とも毎日を見るために起きてきていたようなものだった。
ゆえに、のいない今はただ寂しさが漂うだけで。
「…見てくるか」
バージルが言うと、ライアはうなずいた。
二人での部屋に向かう。
ダンテの部屋を「起きるな」と念を送りながら通り過ぎ、の部屋の前に立つ。
「…………」
耳を澄ませるが物音がしない。
起きていないのだろうか。
少し待って、今度はライアがドアをノックした。
「様… 起きてらっしゃいますか?」
「…………」
反応がない。
起きた気配はもちろん、何かが動いた気配すらない。
やはり寝ているのだろうか。
風邪なのだし、もう一度ノックして駄目だったらやめよう。睡眠を邪魔しては悪い。
そう思い、ライアが再びノックをする。
「…………」
やはり、反応はない。
ライアは息をついて、バージルを見た。
もう行こうと言うつもりだったが。
バージルはじっと、扉を見ていた。
───本当に寝ているのか?
なぜかそう思う。
声をかけても静かで返事がないなら、寝ている他はないだろうとわかってはいるのだが、納得できない。
離れるよう促すライアを無視して、自分もノックしてみた。
ドアに耳を当ててみる。
「……?」
静か。
それに違和感を感じる。
何かおかしい。確信ではなく直感。
根拠のない不安。
「…開けるぞ…?」
その言葉にライアが反対の色を見せたが、視線で制す。
止めようと遮る手をのけてドアの前に立つ。
部屋に鍵はついていないのだ。ドアノブに手をかけ、ゆっくりと引いた。
そして。
そして、二人が見たものは。
「───!!」
ベッドから少し離れた所で倒れている、の姿だった。