第4章 怖い人
きれいになった部屋に汗だくになって座り込む。こんなに汗をかいたのは久しぶりだ。
床にはさっきまで握っていた雑巾が転がっている。
「おわっっ……たーーー!!!」
ベポがバタッと大の字に倒れ込んだ。
部屋は随分ときれいになった。ビックリするくらいの本が壁一面に並んでいるが、足の踏み場もないくらいに散らばっていたガラクタは全部ゴミ箱行きとなった。
「しばらく休憩しようぜ」
「そうだな」
二人共壁にもたれかかって脱力している。そんな私も床に座り込んでいるのだが。
力の抜けたみんなに笑顔を向けた。
「ありがとうございました。お疲れさまでした」
「!」
一時はどうなることかと思った。海賊船に乗るだなんて考えたこともなかった。こんなに親切にしてもらって、見返りを求められるのではないかと怯えていた。
気さくでこんなに陽気な海賊もいるものだ、と初めて知った。
「いいってことよ!」
シャチが得意顔で胸を張った途端、「ぐぅ〜」と誰かのお腹が鳴った。
「おなかすいたぁ……」
どうやらベポのようだ。彼の逞しい体がお腹がすいたと叫んでいる。
突然の情けない音に一斉に吹き出し、笑いながら仲良く四人で食堂に向かった。
「掃除は終わったのか?」
ガヤガヤと昼食を食べていると、船長さんが遅れてやってきた。
「完璧っスよ!」
二人は箸を持ちながらガッツポーズを見せている。船長さんは「そうか」と言いながら椅子に座った。
彼はこちらを見ることもなく昼食を食べ始める。あの部屋の隣は言うまでもなく彼の部屋だ。もしかして騒ぎすぎたのだろうか……。
だがペンギンとシャチは船長さんと仲良く喋っている。
「おい、女」
私に向けられた低い声に肩が弾む。「はい!」とまた悲鳴に近い声を上げてしまった。口に含んでいたものを急いで飲み込んで、ペンギンとシャチの向こう側にいる声の主に顔を向けた。
「後でその手錠を取るから俺のところに来い」
ペンギンとシャチがこちらを向いて親指を立てている。どうやら彼らがお願いしてくれたようだ。
「は、はい、お願いします」
消え入りそうな声でお礼を言った。
相変わらず船長さんは怖いが、何とかしゃべることはできそうだ。