第3章 助け舟
「ハァ……ハァ……」
自分の喉から掠れた吐息が聞こえる度、運動不足の肺に限界がきていることを知らせる。
低い身長と小柄な体型を隠すのに丁度いいような大きな植物がところどころ生えていて、身を隠しながら逃げ回るのに都合がいい。
やがて一つの、人ひとり包み込めるくらいの大きな葉っぱに包まって足を止めた。
足が棒になるという言葉が、全く実感のある形容だと分かった。
そんな休憩もつかの間、どこからともなく私を探す声が聞こえた。
こちらに近づいてくる前にこの場から離れた方がいい。
バサッという音を立てて再び走り出した。
音は海軍たちにも聞こえていたようで、すぐにこちらに足を向けられる。
もうダメかもしれない。逃げ場がない。
あと少しで森を抜けてしまう。抜けてしまえば障害物も身を隠すものもなく、しかし引き返せば私を追いかけ回す海軍が溢れている。
前方に海がキラキラと反射しているのが見えた。
私の薄暗く重い感情とは反対に、木の隙間から見える向こうは目が痛くなるほど鮮やかに私を敬遠しようとするようだった。
ぎゅっと目を瞑って辛い現実から引きこもろうとした。
「おい!こっちに乗れ!」
閉じかけた瞳を開けて顔を上げた。
前方に走り出したばかりの船が見える。
その船にはさっき私を助けてくれた二人とその仲間と思われる男達がたくさん乗っている。腕をめいいっぱい伸ばし大きく左右にふっている。
追いかけてくる海軍の叫び声を聞き流し、森を抜けて海岸を海に向かって走った。
港から飛び降り太ももあたりまである水を掻き分けて、船に近づく頃には体が胸あたりまで沈んでいた。
私のためにたった今おろされた縄ばしごを掴み、腕と足を引っ掛けて体を宙に浮かせた。
ついに海軍を振り切った。