第3章 助け舟
ガンッ…ガンッ…
遠くで、でも近い場所で何かを叩く音が聞こえる。
「クソッ、やっぱり開かねえよ〜…」
「手足がこれじゃあな…」
薄い意識の中、声と音から二人、私の他に誰かいることが分かった。
…あれ?私はこの部屋で捕まっていたんじゃなかったっけ?私の他にもこの部屋に人が?誰?
ぼーっとして焦点が定まらず、細胞が起きていない体と頭を無理やり覚醒させ現状の把握に努める。
「……だぁれ?」
恐る恐る声をかけてみる。寝起きのせいか恐怖のせいか、若干声が震えているような気がする。
「おっ、あんた起きたか。死んでるのかと思ったぜ」
ここで自由を奪われ捕まっていることを忘れさせるようにおどけて見せる彼に、なぜか少しほっとした。
目の前にいる男二人は私の鉄の手錠と違って両手両足を縄でキツく縛られている。それに手は体の後ろに回されている。
帽子を目深にかぶり、お揃いのツナギを着ている。見るからに海賊のようだ。
「お前のせいだぞペンギン。あそこで武器屋に行こうなんて言わなかったらこうはならなかったんだからな」
ジト目で口を尖らせ文句を垂れるが、どこか余裕そうだ。
「しょーがねえだろ!武器も少しは必要だろ。だいたいシャチが方向音痴なせいで周りを取り囲まれたんだぞ」
よく見れば二人共怪我をしている。
ここに捕まっているということは海賊だろうか。
部屋は薄暗いが目が暗闇に慣れてきたようで、彼らの服に海賊のマークが縫い付けられているのが見える。
二人はいまだに言い合いを続けている。
しばしば「アンタもそう思うだろ!?」と私に同意を求める声をあげる。
海賊とは言え、先に捕まっていた知らない女に明るく喋りかけてくれる気のいい男たちだ。
ここで助けても害はなさそう。これから海軍基地かどこかへ運ばれる途中のしゃべり相手を手放すのは少々惜しいが、私には海軍よりもこの人たちの方が優しそうに見えた。
この部屋が音を立てていないということは、まだ船が動いていないということ。
必死にドアに体当たりをしていたということは、ここから早く出たいということ。
重い気分を軽くしてもらったお礼にこの人たちの縄を解けないだろうかと思ったが、思ったより固くキツく結ばれているように見える。握力も力もクソもない私では解放するのは難しそうだ。