第7章 アカデミー
私が、その人の名前を呼び、振り返るとその人は苦笑いをしながら私に近づいてきた。
「盗み聞きなんて人聞き悪いな。偶然聞こえただけなんだが..」
『そーゆーのを盗み聞きって言うんですよ。しかも私の一人言を』
「悪かった」
『...』
素直に謝られるとそれ以上は何も言えず黙り混んだ。
「で、守りきる自信がないってどういうことだ?」
『...いつからいたんですか?』
「慰霊碑を撫でてるところから」
『最初からじゃないですか』
シスイさんは笑いながら私の隣に立ち、私はそれを横目で見て小さくため息をつくと話始めた。
『...私は大切な人を失うのがどうしようもなく恐いみたいなんです。未だにミナトさんとクシナさんの事をドロドロと引きずってる。』
「ミナトさんとクシナさんって...」
『4代目火影とその奥さんのことです。師匠なんです。私の』
「!そうだったのか」
『はい。シスイさんも知っての通り、二人は九尾事件で亡くなりました。その時に悲しみと同時に浮かんできたのが、強くなりたい、と守りたい..だったんです。』
「...」
シスイさんは私の話を黙って聞いていてくれる。
慰霊碑の方を見ながら私は淡々と話した。
『実際、二人から頼まれている守らないといけないものもありますし..』
ナルトのことだ。
『イタチとサスケも守っていきたいし、この里も守りたい。この里の人達を..守りたい。』
『つまるところ、守りたいものが多いせいで頭がごちゃごちゃになってるってことです。』
さっき、つい口を滑らせて言ってしまっただけなので気にしないでください。
私はそこまで言うと、立っているシスイさんを見上げて、小さく笑いかけた。
私の目をじっと見てくるシスイさんの真っ直ぐな目につい目をそらしてしまった。
「...あまりにも..たくさんのものを背負おうとしすぎだ。」
『え?』
シスイさんは私に視線を向けたまま、そう言った。
「..あまり難しく考えすぎだ。お前のその守りたいものというのはでかすぎる。」
そう言ってシスイさんは急に座っている私の手を握り、無理矢理立たせた。
『え、あの、シスイさ...』
そして、あろうことか握っていた手を引き、自分の方へ引き寄せ、優しく抱きしめてきた。