第10章 暗い月夜
メズと別れ、またイタチを探すために歩く。
何となく、どこにいるかは分かる。
シスイが飛び降りた岩場に、イタチは、額を押し付けて目を閉じていた。
大分前から気配を消して歩いていた私は、イタチに気づかれない程度の場所へ行き、岩に寄りかかるようにして姿を隠した。
イタチ.....
心の中で、弟の名を呼ぶ。
「.....くっ..」
イタチは、泣いていた。
4歳の時以来見ていなかった弟の涙。
胸が、苦しくなった。
先程の、何もできなかったと泣くイズミの姿を思い出す。
何もできなかったのは..
何もできないのは..
私だ。
イタチが泣いているのに、何の言葉もかけてあげられない。
未来が分かるのに、何も出来なかった..
いや、しなかったのだ..
原作が、変わることを..
恐れて..
結果...
イタチにも..
サスケにも..
辛く、悲しい想いをさせるし...させている。
『...っ、..』
唇を噛みしめて堪えようとするが、次から次へと流れてくる涙を止めることは出来なかった。
私は、誰に見られているわけでもないというのに..自分の目元を覆い、俯いた。
ごめんなさい...
こんな...
身勝手な姉で...
『ごめんなさい...』