第10章 暗い月夜
暗闇の中、イタチを探して歩く私の目の前に、見慣れた猿面が立っていた。
「よっ、ツバキ」
『メズ...イタチを知らない?』
「分隊長なら上層部に今回の事を伝えにいったぜ?」
『...そう、』
それなら...もうダンゾウとイタチの、あの会話もそろそろあるころ..かな、
いよいよ迫ってきた事件に思わず目を伏せる。
「...一つ、聞いていいか?」
メズが猿面を取りながら話しかけてくる。
『...何?』
「...何で、そんな平然としていられるんだ?」
『?』
メズの質問の意味が分からず首を傾げる。
「いや、あのダンゾウ様のことだ、もしかするとうちは一族を全滅させるなんて言い出す可能性もなくはないだろ?」
中々に鋭いやつだ。
「なのに、お前は...何て言うか..分かってた、みたいな反応してる」
『...うん、分かってたよ』
「え、」
『って言うのは嘘で』
メズが思わずといったようにバランスを崩す
『...まあ、少なからず、こうなるかもしれないっていうのは..考えてたから...』
空を見上げる、
星は出ているのに、月が見えない。
『それより、私は貴方の方が不思議』
「ん?」
『だって、もし一族が殺されることになったら貴方達のどちらかが殺されるかもしれないんだよ?』
私がそう言うと、メズはニッと笑い
「ま、そうかもな!」
と、言葉を返した。
「ダンゾウ様に仕えると決まったときから死は覚悟してきた、別に苦じゃねーよ?...まあ、俺が死ぬってなると..ゴズの事がちょっと心配だな」
そう言ったメズに、私は...何も言えなかった。