第10章 暗い月夜
イタチと共に、久しぶりの会合に顔を出す。
「今さら何をしにきた」
「話をしにきた」
「今さらなんの話だ?ツバキ、イタチ」
迫ってくるヤシロから私を守るようにイタチが前に出る。私は、イタチの後ろで、軽く壁に寄りかかった。
「愚かな真似はよせ」
「愚かな真似とは何の事だ」
「クーデターだ」
イタチの一言に周りがざわめく。
「会合にも出ないお前達が今さら何を言っても無駄だ」
「里はあんた達が考えているほど甘くない...戦えば、必ず負ける」
「黙れ!!」
父が大声で息子を怒鳴る。
「やりもせずに負けるなどと言う者には、忍の資格はない。ここから去れ」
相手との...一族と里との力量の差をはかれていない貴方達こそ、忍の資格はないと言ってやりたいがすんでのところで飲み込む。
「本当に勝てると思っているのですか、父上」
穏やかな口調で問うイタチに父が一つため息をついた。
「お前はまだ幼い。だからこそこの世の本当の姿を知らん。どれだけ足掻いてもどうにもならない現実というものがこの世にはある。死ぬまで耐え続けなければならない人生がいかに虚しいかをお前はまだ理解できん」
「現実が虚しいものなら、変えていけばいい」
イタチの言葉はどうやっても同胞達に靡かない。
未だに言い合っている一族を見て、涙が出そうになる。
貴方達は、もし、仮にクーデターが成功したとして、その先に何を求める?何を見る?
結局は一族の自己満足だ。
人間という生き物は欲深い..また、別のことで不満を覚えるに決まっている。
「俺はお前達、そしてお前達の子供のために起つのだ。うちはが疎まれ続ける現状を俺の代で変えるため」
...なら、どうして
「俺たちの事を想ってくれているのなら、どうしてこんな愚かな真似を...」
「裏切り者が偉そうに...」
周りから殺気と、非情な言葉が飛んだ。
「...帰れ、」
「そうだ!帰れ!」
周りからの怒りの声...
『...イタチ』
それに、耐えきれなくなったのか、悔しそうな、悲しそうな顔をしながら、イタチは、この場から立ち去った。