第10章 暗い月夜
『ねえ、ナルト』
未だに目を泳がせて混乱した表情をしているナルトに微笑みかけてギュッと抱き締めた。
「姉ちゃん?」
『私ね、貴方の事が大好きだよ』
「!、」
『まだ、貴方に言えていないこともたくさんあるけど、これだけは信じて?私は貴方の事が大切だし大好きだよ』
できるだけナルトに分かるように簡単に私の気持ちを言う。
ナルトは驚いたように目を見開いたかと思うとギュッと力強く抱きついてきた。
「.....」
何も言わないナルトの頭を優しく撫でる。
しばらくすると、私の肩が濡れ始め、嗚咽が聞こえてきた。
やはり、この子も...色んなものを溜め込んでいた。
近くに色々なものを溜め込んで苦しんでいる人がたくさんいるせいでそういうのが何となく分かってしまうのだ。
肩を震わせているナルトの頭を優しく撫でたままナルトの家に向かって歩き出す。
ナルトには、私がうちは一族で、サスケの姉だということは言っていない。
言っているのは、名前がツバキであることと、忍であるということだけだ。
これからの事を考えると、あまり私個人の事を言わない方が良いだろうと思ったのだ。
うちは一族の事件でイタチは里抜けをする..その時に、私も共に里を抜けようと思っている。
もちろん、イタチに殺されるということもなくはないが、可能性は低い。
イタチに...私は殺せない。
そして、私も...イタチを殺せない。
これからの事は、もう考えてある。
ナルトには、私の事を待っていてほしい。
生きている..と、信じて