第10章 暗い月夜
『...美味しかった』
「やっぱり一楽のラーメンが一番だってばよー!」
暗くなった道を歩きながら吐息を洩らすように言った。
予想以上の美味しさだった..これは、ナルトもハマるわけだ。
「なあ!姉ちゃん!まだどっか行くのか?!」
目を輝かせながら私に聞いてくるナルトに微笑みながら、どこか行きたい所はある?と聞くと、単じ..素直なナルトは真面目に考え始めた。
ずっと喋っているナルトが静かになったため、周りの声が聞こえてくる。
少し暗くなったとはいえ、まだ人がたくさん行き交っている。
「ほら、あの子よ..」
「いやね、何でこんなところをうろちょろと」
「大人しく家に閉じ籠っててくれればいいのに」
嫌でも聞こえる、この陰口...
ああ、腹が立つ。
ナルトの事を何も知らないくせに...あなた達が見ているのは、ナルトではなくて、ナルトの中にいる九尾だ。
なぜ、ナルト自身を見てあげないのだ。
こんなに...こんなに、いい子なのに..
「うわっ!!」
『よいしょっ』
「姉ちゃん?」
ナルトは急にしゃがみこんだかと思うと、自分の体を持ち上げた私をきょとんと見つめている。
『ん?』
「何で急に抱っこしたんだってばよ?」
『嫌だった?』
「いや..」
動揺したように目を泳がせるナルトに笑いかける。
ナルトは、大人にこーゆーことをされたことがないのだろう。
私が会いに行くときも、いつも一人でブランコに乗っていたり、歩いていたりしている。
そんなナルトの周りでは大人達がコソコソと陰口を叩いていて..
九尾事件で、多くの人が亡くなり、その亡くなった人達の親族や友人は、ナルトを親の仇のような目で見る。
うちは一族からも、少なからず犠牲者は出た。が、
ナルトが悪いわけではない。
いや、あの事件に誰が悪いとか悪くないとかそういうものはないのかもしれない。
誰もが利用し、利用され..憎しみや悲しみの連鎖が重なりに重なって起きた事件、それが、あの九尾事件なのだ。
それに、あの事件の...最大の被害者は、ナルトだ。
両親を失い、何もわからないまま里の人達からバケモノ扱いされる。
私は...そんな貴方の、支えになりたい。