第8章 下忍
「...姉さん?」
任務が終わった俺は、姉さんとの約束通り、すぐに姉さんがいるであろう病院に向かった。
病室に入ると、ベットで横になり寝ている姉さんが目に入った。
起こさないように細心の注意をはらいながらベットの横にあるイスに座り込む。
姉さんの腕には痛々しく点滴がされていて、胸が痛んだ。
あの時、俺は何もできなかった。姉さんが殺されそうになっていた時も、テンマがあの男に向かって行ったときも、俺は、動くことすらできなかった。
俺はそっとベットの中から姉さんの手を取りだし、ギュッと握る。
「ごめん、姉さん...俺..ごめん、」
俺に..俺にもっと力があれば...
姉さんがこんな目に遭うことはなかった、
ちゃんと、守りきることができた...
もっと、もっと...力があれば
「くっ、う...」
耐え難い感情と呻き声が部屋中に響き渡った。
力がほしい、
姉さんを守れるほどの...いや、それ以上の、あの仮面の男すら、この世のありとあらゆる者を凌駕するほどの...力を、
そう、考えた瞬間目が燃えるように熱くなった、景色が紅く染まっている。
これは...
姉さんの方を見る、小さな焔が揺れている、命の焔が
「...これが、写輪眼」
呆然としながら、窓の外を見る。外はもう暗くなっていて、月が俺達を見ているようだった。
「...」
そこで、ふと思った、
そう言えば、あの男と戦っているときに姉さんは写輪眼を使っていた。
あの場面で開眼したとは考えにくい、
いつ開眼したんだ...?
それに、なぜ、開眼していることを父や母..俺にさえ、言わなかったんだ、
「姉さん...姉さんは、俺に何か隠していることがあるんじゃないか?」
少しは頼ってほしい...いや、違うな、
俺が、頼ってもらえるほど強くなればいい、
「...強くなるから、姉さん...姉さんが、頼ってくれるほど、強くなってみせるから」
そう言って、姉さんの手をギュッとさっきより強く握った。
握ってくれている手が、イタチだと分かったのか..ツバキは、安心したような顔をしながらスヤスヤと眠っていた。