第8章 下忍
男が歩いていくのを黙って見続ける。
何が楽しみだ、私は全然楽しみじゃない、むしろ憂鬱だ。
はぁ、とため息をつくと同時に体が軽くなった。どうやら無意識に力を入れていたようだ。
「ツバキ、イタチ」
サスケを抱っこした母さんが駆け寄ってくる。その後ろからは父さんが静かに歩いてきている。
「何を言われた?」
父さんが私達に向かって、少し厳しそうな顔をして聞いてくる。
「大してことじゃない」
「そうか...」
二人が話している間も、私は男の後ろ姿を睨み付けていた。
ついにあの男がイタチに接触してきた。
『...この頃から、あの男は』
イタチを自分の手元に置こうと考えていたのか、
「ツバキ」
『..なに?』
急に父さんが私に向かって話しかけてきた。
「お前は...何を、知っている?」
『.....』
予想外の質問に少し目を見開く。だが、すぐに無表情になり、父さんの目を真っ直ぐ見た。
『...あの人は多分これから、イタチとサスケに災いをもたらす存在..だと思う。』
「どうしてそう思う?」
『...勘』
「...そうか」
思う。ではなく知っている。だが、それは言えないため少しあやふやにして言った。
あの男は危険だ。イタチは恐らく物理的に殺されることはないが、原作では心を殺されていた。
まあ、あの男だけのせいではないのだが..
「あの人は?」
イタチが父さんを見上げて男の事を聞く、私はあの男の名前を聞くのを拒むように、二人に背を向け空を見上げた。
それでも、これほど近くにいては聞こえてしまうだろう。
「志村ダンゾウ...三代目の側近の一人だ」