第8章 下忍
『...あなたから嫌な感じがする。』
「ほう」
間違ったことは言っていない。この男の事は前世から知っている。
知っているからこそ、こいつの危なさや恐ろしさもわかる。
イタチを利用されてたまるか。私の頭にはそれしかなかった。
「お前達の人生には、それぞれ違う乱がつねにつきまといそうだ」
その言葉で私は眉間に皺を寄せた。
何なんだ。こいつは..一体
「アカデミー創設以来の天才たちに、ひとつ問いたい」
「『...』」
「難破船に同胞である十人が乗っている。そのなかの一人が性質(たち)の悪い伝染病にかかってしまった。このまま生かしていると他の九人も病にかかって死んでしまうことになる。お前がこの船のリーダーならば、どういう判断を下す?」
「病にかかった者はどのみち死んでしまう宿命にある。リーダーならば残った九人の命を救うことを最優先に考えるべきです。俺は一人を殺して九人を救う道を選ぶ」
「お前はどうだ。」
『...私もイタチと全く同じ道を選びます』
私達の答を聞くと男は不敵な笑みを浮かべ、
「明瞭な答えだ。」
そう言って、私達の方へ近づいてくる。
咄嗟に身構えるが、殺気がなかったため少し警戒をといた。が、
「お前は」
『!』
「お前は、何を知っている」
ドクンと胸が高鳴ったのがわかった。
男から、殺気が出てきたからである。
『どういう意味ですか?』
ちょっとした恐怖を顔に出さないように男を睨み付ける。
「...お前は俺を見たとき、すぐに警戒したように遠退いた。」
『あなたの纏う空気が不気味だったので「嘘をつくな」!』
「俺に嘘は通用しない。」
『..』
「里の中で会った瞬間に警戒するような相手はそうそういないはずだ。俺はお前と会ったことがない。だが、お前は俺の事を知っている。なぜだ?」
『.....』
私がこいつを“知っている”、というのは確信か。
一つ深いため息をつく。男の後ろから母と父、そしてサスケが近づいてくるのがわかる。
『...あなたがこれから近いうちに、私にとって大切なものを奪いそうな予感がする。だから、警戒した。』
「...やはりお前は、弟とはまた、別の乱がつきまといそうだ。」
そう言うと男は私達に背を向けて歩きだした。
「また会える日を楽しみにしている」