第8章 下忍
桜の花が綺麗に舞う校庭をイタチと二人で歩く。
その先には父と母とサスケがいる。
サスケは最近やっと歩けるようになって、どこへ行くにも自分の足で歩き、少し目を離した隙にうろちょろどこかへ行って母さんを困らせることがよくある。
「!、姉ぇ!兄ぃ!」」
そう言って嬉しそうにおぼつかない足で歩いてくる弟。周りは騒がしいはずなのにサスケの声ははっきりと私の耳に入ってきた。
思わず、ふっと笑みがこぼれる。
原作でのあのツンケンしたサスケを多く見てきた身としては純粋で、素直で、こんなにも可愛いサスケを見るのは新鮮だった。
弟というよりなんだか子供みたいな感じだな。
横を見ると、イタチも穏やかな顔でサスケを見ていた。
..もう、この頃からイタチはサスケを守らなきゃとか思ってるんだろーな。
「危ないぞ。サスケ。」
穏やかな口調でイタチがサスケに声をかけると同時に、視界からサスケが消える。
目の前に顔の右側が包帯で覆われている男が立っていた。
そいつの顔を見た瞬間、私は反射的にイタチの手を引いてそいつから距離を取り、イタチを自身の後ろに隠した。
「姉さん?」
「..お前達がうちはツバキとうちはイタチか」
「『...』」
左目だけが私達を睨んでいて、どこか不気味な雰囲気を纏っている。
「なるほど...」
チラリとその男の背後を見ると、こちらに来ようとするサスケの肩を母さんが掴んで止めている。
良かった。今、サスケとこいつを接触させたくない。
睨み付けてくる男を自分も睨み付ける。
「お前は凶相の持ち主だ」
イタチ見ながらその男は言った。
男の目からイタチを隠すように自分が前に出る。
「凶相?」
「乱を呼ぶ相だ。その皺」
そう言った男は真っ直ぐイタチの目頭から頬にかけて走る皺を指差した。
最近になって出てきた、イタチのトレドマークのような皺。それを男は凶相と言ったのだ。
『...イタチ、会話しないで。』
「お前は何を警戒している。何も取って食いはしない。」