第7章 鳥籠の少女
「おい、ミア、顔が青いぞ」
「……エスト様、どうか私から離れないでください。もしも暗殺者がやってきたら、守ってくださいね。
約束ですよ、約束ですからね。私は死にたくありません。助けてくだ」
「わかった、わかった……」
あ、こいつ聞いてないのに返事したわね。私はエスト様に無理やり腕を組まされ、歩き出した
「ミア」
後ろからグリフィスト様に呼び掛けられ、私の耳の近くで小さめの声を出した
「リリス令嬢には気を付けろ、近頃バーデン男爵と組んで何か企んでいると噂だ」
バーデン男爵……ああ、サーカスでお会いしたわね。エスト様暗殺にメイフィスを買おうとしてた
「エストがいるから心配はないかもしれないが…。」
グリフィスト様の厚意を受け取ったようにうなずくと、フッと嬉しそうに口角をあげて、近くにあった馬車に乗り込む
「それでは、エスト、ミア。」
「ん……おう」
グリフィスト様と別れ、私とエスト様は王宮の舞踏会会場まで足を運んだ
王宮の中は美しく飾り付けされている。中央の大きなシャンデリアはキラキラと輝き、宙にキャンドルが浮いていた。
昼頃にも関わらず中は暗く、踊るところなのだろう円をかくようにキャンドルがスポットライトの役目を果たしている
近くに、イシュダル様を発見し、ごきげんようと挨拶をしたが無視されてしまった
私はイシュダル様に嫌われているようだ。と改めて実感した
そういえば、ローレンお兄様と箱のなかに閉じ込められたことがあったが、あの魔法の箱、イシュダル様のものだった
変わった物がお好きなのかしら
「子爵という位でエスト様になんて馴れ馴れしいの」
……ん?
誰だ、いまのは。と、声の主は赤毛の髪を後ろにまとめ、オレンジのドレスをみにまとった気の強そうな少女だった