第6章 双子王子(弟)
ゴドヴィは中庭にはいなかった。
ゴドヴィはどこに行ったのかと、辺りをキョロキョロと見渡していると、小柄な黒いなにかが眼をキランと光らせてよつんばのものが、私のほうに、走って
「え、キャアアアアア!!」
デジャブ!!デジャブよ!
あれはとんでもない、大食の匂いがするわ!!
わかるの、私には、あの瞳は食ハンター犬(チェイスと同類)よね!!
「イヤアアアアア!!」
とにかく、がむしゃらに走れ!!もう、なめ回されたくないわ!!
……なんて言うものの、私は足が遅い。かなり遅い。逃げられる気がしな……
「ワンッ!!」
「キャアアアアア!!」
私は、その何かに捕まり、顔をなめ回された。
あれ?……この子、本物の犬?
「ワンッ!!」
犬は白くてモジャモジャ、小柄な……たしか、ロマーニョ・ウォータードッグ!
トリュフをさがすのに最適な犬じゃないの!!
やはり、食ハンター!!
じゃ、ない。
「どうしてここに、犬が」
たしか、犬を飼ったことはなかったはず。
前世記憶なしverミアは犬が大の苦手だから
「アンドリュー…!!」
ドスドス、走ってやってきたのはゴドヴィであった。
「……お嬢」
「あら、この子、アンドリューっていうのね、ゴドヴィがご主人さ……!!」
ゴドヴィがいつも以上の威圧感を放つ。
こ、ここ、怖いわ!!
怖いの、怖い!!な、なに?なに、なに?
──ガバッ
「ギャアアアア!!ごめんなさい!!許して!!──え?」
眼を瞬時瞑ってみたのをゆっくり開くと、ゴドヴィが深々と頭を下げていた
「…………。」
「あ、あの。ゴドヴィ?ゴドヴィさーん」
「…………。」
「ワンッ」
元気に、犬のアンドリューが吠えるだけ、沈黙は30分続く
「いや、続かないから、続かないわよ」
30分も続かないわよ!!
「あ、もしかして、謝ってくれてるの?」
「……辞職」
「いや、はやまらないで!?」
辞めてどうするの!!
王城で料理長するの!?たしか、従業員が犬を飼うのは禁止よ!!
アンドリュー、どうするの!!
………私の美味しいスイーツどうするの!!