第4章 お兄様の秘め事
いつもの中庭にて
「それにしても、今日は誰も来られないのですね」
ミシェがハーブティーを煎れながら、空をボーッと眺めていた。大きな丸い黒い瞳とおかっぱの髪が日光に照らされているので少し、眩しそう
「そうね、でもどうして」
「あ、いつも、ミアお嬢様に会いにくるために、ローレン様や王太子殿下がこちらに来られていたので」
ふにゃりと笑ったお顔が可愛らしい。
私はハーブティーをごくんと飲み干した。
ごちそうさまです、その笑顔
ガシャン!!
「ん?」
いきなり、何かが多分花瓶が割れた音がした。
「わ、わわわ!!ミアお嬢様、お逃げください!!」
来ました、皆のアイドルとなった、我が家のメイフィスが遠くから慌ただしく大きな声を上げた
「ミア様、右です、お菓子をそっちにおいたまま右です!」
メイフィスの隣にしっかりもののメアリーもはらはらした様子でそういった
私は理解できずに、今、食べ掛けのエクレアを一つ持って(それ以外は置いて)右に曲がった
ミシェは何か、察したように、慌ててその場から離れていく
いったい、なんなのだらうか。
と、考えているともうスピードで何か人間っぽいよつんばになった、何かがこちらに突進してくる
「え──え?」
それは、エクレアをむしゃむしゃ平らげている。
それは、私と同じルビーの瞳で、茶髪の髪をした、美少年だった
きっちり着込まれたはずのスーツがヨレヨレだ
………残念美少年かな。
「ん……」
ペロリとてについたチョコレートを舐めた少年はクンクンと匂いを嗅ぐような仕草をして
こちらに向いて
目があって………
エクレアを持った私の手に突進してきた
「いやあああああ!!」
「「「ミア/様/お嬢様!!」」」
その少年は私を押し倒し、まるで犬のように、私の持っていたエクレアを一口で平らげたあと、私の口元をペロペロ舐める
「んんんーーー!!」
口を開けられないで、そのまま、私は気絶してしまった
なんなんだ一体!!?
このわんちゃんはなんなんだ!?