第4章 お兄様の秘め事
「おい、起きろ、受験生」
懐かしい声……誰だったか。
ここは教室?……目を開けると、学ラン姿の少年がいた。
「翔…?」
そう、だ。
この男の子は翔だ。
私と小学校から、仲良しの……親友の翔
だんだん、はっきりしてきた。
生真面目な数学の先生が白チョークで黒板に文字を残していく。
「翔……ありがとう」
「お、おう。」
ちょっと頬を染めた、翔は、自分の勉強にまた戻った
「(翔……かっこいいな)」
そう、私は片思いをしている。
翔はスポーツ万能、成績優秀、美形、才色兼備。
私なんかと釣り合わないし、振られるのは目に見えてわかってる。
だから、私は絶対告白しないのだ
「いちゃいちゃしないで授業ちゃんと受けなさい」
先生に聞こえないくらい小さな声で親友のきわがからかうようにそう言う
──ミア、おーい
大好きなお兄様の声がする、ああ、いかないと……
今、生きているのはあっちの世界だから。
……そうだ、もう、お母さんにもお父さんにも……翔にも、きわにだって
会えないんだ
私は、死んだから
私はもう違う世界の人間だから
――
「んん……ローレンお兄様……私ったら、少し眠ってしまって」
「それより、うなされていたが、悪夢でもみたのか」
ローレンお兄様は少し心配そうに私をみていた
翔…きわ…
私は今、ちゃんと笑える自信がない。
「ローレンお兄様……」
「ミア……今日はもう帰ろ」
「ええ……」
ローレンお兄様は私に気遣うように、私に手を差しのべ、優しく微笑んだ
会いたいな……翔に
会いたいな……家族に
会いたいな……きわに
もう、会えない。
翔に……告白、してから死ねばよかったな
きわに…ありがとうっていいたかったよ
お母さんに……いっつも、ご飯作ってくれて、支えてくれてありがとうって
お父さんに……大きな背中をみせてくれてありがとう。尊敬していると
伝えたかった。
「(皆、ありがとう。バイバイ)」
私は皆とお別れしなくてはならないから。
ここで、今度はちゃんと、生きる。
死亡フラグ回避するんだから。