第4章 お兄様の秘め事
「お前は優しすぎる」
「それは、ローレンお兄様よ」
ローレンお兄様はまた、真っ青になる。
「俺も人間だけど人間が怖いんだ。……平気に嘘をつく、どうせ、それも、さっき、お前が俺に言った言葉も嘘なはずだ」
どこか、憎しみのこもった、力ない表情に額をこつんとあてた
「そう、信じないならいいわよ。
私はローレンお兄様が大好き」
「やめてくれ」
「大好きよ。」
「……」
ローレンお兄様は私を抱き締めた。どこか、嬉しそうで、どこか、悔しそうで寂しそうで
「俺は産まれた時からなにももたなかった……、欲が無くて、両親に愛されるためだけに、自分を捨てていい子を演じてきた」
ローレンお兄様はどこか、怯えながら私を抱き締めた手を震わせて、話す
「8歳になった俺は両親に愛されるために、独学で必死に勉強をした。
何でも、一番をとった。
両親が褒めてくれるから
……愛してくれたと思ったんだ。認められたと思ったんだ。
それなのに、両親は俺を迷いもなく、俺を金と引き替えにリリアンヌ……この家に売ったんだ 」
ローレンお兄様の腕が震える、力も込もった
「その時、人間が信じられなくなった。
そして……愛して欲しいという欲もなくなり
俺は本当に空っぽになった」
ローレンお兄様は私から離れ、私を見た。怯えていて。今にも、死にそうな彼がいた
「なぁ、こんな俺はお前の義兄でいても良いのか………?」
「ローレンお兄様…私は貴方を大好きなの。義兄として傍にいてくれますか」
私は微笑んでみせると、ローレンお兄様はどこか、救われたような、……表情で笑った
光がある、生きた瞳
「やっぱり優しすぎる」
「また、おもしろいこと教えて、サーカスは楽しかったから」
「おう」
私とローレンお兄様はこの時、初めて兄妹になれた気がした