第35章 ファインダー越しの恋 ( 澤村 大地 )
清「城戸さんは影山がいるし、澤村と帰る方向は同じでしょ?···ちゃんと、いろいろ話してみれば?菅原はこっちが引き受けるから」
清水さんにも、バレてたんだ···
武「吉岡さん。あなたは自分のことを臆病だと思ってはいませんか?でも、僕は違うと思うんです。臆病だと言い聞かせて、自分の心に蓋をしているだけだ、と」
『それは···そう、かもです』
武「人間、時には茨の道を裸足で歩く時もあるでしょう。ですが、それはいつかきっと役に立つ時が来ます。変な事ばかり言ってしまいましたが、僕がいま吉岡さんに言ってあげられる全部です」
答えが分かっているから、何も言えない。
誰を見ているのか知っているから、その視線の先を見ることが出来なかった。
でも、それじゃきっと···後悔しか残らないんだよね。
『武田先生、ありがとうございます!当たって砕けてみます!』
カメラをギュッと抱きしめてから、ファインダーを覗く。
その先には、たったひとりの大きな背中が見えて。
ゆっくり、ゆっくり···シャッターを押した。
今はまだ、澤村君に何かを伝えるのは怖いけど。
それでもいつか、この気持ちを伝える事が出来たら。
私は新しい一歩を踏み出すことが出来るだろう。
だけど。
もう少しだけ、このままでいてもいいよね?
だって···
ファインダー越しの姿だったら、私だけが知っている澤村君がいるから。
そう思いながら、私はもう一度だけシャッターを押した。
~END ~