第31章 Platinum ( 木兎光太郎 )
〖 恋 〗は憧れるもの···で?
〖 愛 〗は育むもの···だっけ?
どっかの哲学者が、そう言ってた···気がすっけど。
誰だか忘れた。
自分にとって、そもそも恋や愛なんてどんな物なのかなんて知らない。
ただひとつだけ思うのは···どちらも自分には必要ない。
バレーだけありゃ、生きていける。
それだけ。
そう···思っていたのに。
オレはいつの間にか、両方とも欲しいと···思ったんだ。
あの人に出会うまでは···
「あかーしー···こ、恋って、どう思うよ?」
赤「···木兎さん、悪いものでも拾い食いしたんですか?」
「ちげーよ!」
ここ数日、オレの頭ん中に住み着くアイツの事を聞こうとすれば、あかーしは顔色ひとつ変えずにそう言った。
赤「木兎さんが何を拾い食いしたのか分かりませんけど、俺にもそれは分かりません」
「だーよなぁー!」
そもそも恋ってなんだ?
誰かを好きになったら、それが恋なのか?
いや、オレは···あかーしも好きだぞ?
それも恋なのか?
考えながら、ジッとあかーしを見る。
···男じゃねーか!!
オレにはそっちの趣味はねぇぞ?!
絶対ねぇぞ!!
ちょっと興味は···いやいやいや!
ない!
ないったらない!!
赤「木兎さん···俺の顔に何か付いてますか?それに、その暑苦しい顔···近付け過ぎです」
離れろと言わんばかりに、あかーしがオレの肩を押した。
「あかーし···オレの事、どう思う?」
赤「なんですか、それ」
「だーかーら!好きか嫌いかってヤツよ!」
両肩を掴んでユサユサと揺すりながら言えば、あかーしはため息を吐きながらオレの腕を掴んだ。
赤「好きか嫌いか、で言えば···俺は好きですけど、木兎さんの事」
「それって恋か?!」
赤「違いますね。木兎さんはどうしてそんなにも恋に拘るんですか?やはり拾い食いを···」
「してねーよ!」
赤「じゃあ、どうしてですか?木兎さんのプレーにブレが出たら困るので、セッターとして確認しておきたいですね」
「それは···だな」
なんて言えばいいんだ?
あかーしに、どうやって説明すりゃいいんだ?
赤「木兎さんらしくないですね。そんなに口篭るとは」
「だってよぅ···春に赴任して来た養護のセンセーが、頭にチラチラ浮かぶんだよ」