第27章 チョコレート・パニック ( 黒尾鉄朗 )
研「···面倒臭いから、おれパス」
夜「ノリ悪いぞ研磨!相手がどんなヤツが気にならないのか?」
研「ノリ悪くてもいいから、パス。それに、相手は別に気にならない。見てれば分かるから」
「まぁ、研磨がやる気ナシオなのは今に始まったことじゃないって」
コイツが本気で動いたのは、子供のころに1回だけ。
それも隣町の小学校のいじめっ子に、公園で遊んでた紡が泣かされて帰って来た時の、だ。
あん時は研磨の行動力にはオレだってビビったからな。
クロ行くよ、静かに言ってオレを引き連れ···自分よりガタイのいい相手に研磨らしい頭を使った大人しめな口調で攻め続け···結果、土下座までさせるっていう。
オレの役割は何だったかって言えば、バレーと同じく···壁だ。
向こうがケンカ吹っかけてきたらオレに代わるからとか何とか言ってたっけ。
昔っから紡の事に関しちゃチラッと本気を見せる研磨が、今回ノリが悪いのは疑問だが···ま、いい。
「んじゃ、やっくん。あとリエーフも、作戦会議だ!」
「「 ゥ~ッス! 」」
そして、遂にやって来た···バレンタイン当日。
オレ達が考えた作戦は、こうだ。
まず、紡と同じクラスである研磨が使えない以上、リエーフが何かと一日中ちょくちょく紡に張り付く。
リエーフに張り付かれた方はウザい事この上ないだろうが···
紡が悪いオトコに引っ掛からない為の安全策だ。
なぜその人選がリエーフかってのは、オレとかやっくんがそうしたらあからさまに怪しまれるからだ。
そこんとこリエーフなら、持ち前の人懐っこさ···というか、紡に関してのみ働く驚異のアンテナが役に立つからだ。
リエーフならば、きっと女子トイレの前で待ち伏せしてても紡は怒らない···と、思う。
やっくんの役目は、リベロの特性を生かした俊敏さ。
···と無理やり理由付けた、第2の見張りポジション。
リエーフが賄いきれない部分を、やっくんがフォローする。
そしてオレは···
「おーい、紡!」
足止め係だ。
「クロ?何だか今日はやけにバレー部員に声をかけられる日だなぁ」
「そっか?いつものことだろ?」
そんな感じに軽く交わして、ニヤリと笑ってやる。