第27章 チョコレート・パニック ( 黒尾鉄朗 )
毎年この時期になると、男共はソワソワし始める。
バレンタインと呼ばれる一大イベント。
それはクリスマスと肩を並べるほど存在価値が高いイベントだ。
別にオレは、今までそれに関して困ったことなんてないが···今年は別だ。
どうでもいいチョコなんて、貰っていないのと同じ。
義理、と呼ばれるモノも。
一方通行な想いが込められたモノも。
受け取るつもりは一切ない。
欲しいのは、ただ1つ。
リ「つーちゃん先輩!バレンタインにオレにチョコ下さい!」
夜「アホか!自分から欲しがってどうすんだよ!」
リ「そんなこと言ったって、夜久さんだってホントは欲しいクセに!」
夜「リエーフ···いつもより元気、有り余ってそうだな?」
「まぁまぁ、夜久先輩?そんなに怒らなくても」
リ「やった!じゃあオレ予約したい!」
「何言ってるのリエーフ。予約は受け付けませーん」
···アイツからの、ただ1つ。
なぁんて、カッコよく言いたいが。
やっぱ貰えるなら貰っとくか精神で、義理でもなんでも貰っちまうんだわ、これが。
研「クロ。今年もたくさん貰ったら、頂戴。おやつに食べる」
「ヘイヘイ。貰えたら、の話だけどな」
研「いつも貰ってるじゃん···」
毎年食べ切れないほどのチョコを貰っては、研磨に分けてやる。
研磨自身もいくつか貰ってはいるんだが···
バレーやってると頭使うから甘いもの食べたい···のひと言で、貰った分もオレがやった分もあっという間に食っちまうし。
アイツいつか、糖尿病になるんじゃねぇのか?なんて心配してみたり?
ま、そんな事はさておき。
「バレンタイン、ねぇ~」
いま話題のワードを口に出してみたりもする。
今更、オレにだけくれ···なんて言えるワケないっての。
そんな立場でもねぇし?
なんせ研磨と同じく小学校時代から一緒にいて、何かと3人で遊んで。
···何もかも、3人一緒で。
高校受験の時、オレと音駒でバレーやろう!って研磨を誘えば、私もみんなと一緒がいい!ってついてきて。
なのにアイツ、部活やらないとか言って放課後バイトするとか言い出すから、だったら!ってマネに引っ張って来たのもオレだけど。
まさか、彼氏でもないのにオレにだけチョコくれとか、ないだろ?
いや、むしろ言っちまって失敗したら笑えばいいのか?