第25章 いつか王子様に ( 日向 翔陽 )
正月明けの最初の部活の日、練習が終わるとドッサリ雪が積もっていて。
···帰れなくなった。
さすがに朝からチラチラ降ってたから、今日は電車を乗り継いで来たけど。
その電車も止まってて、電車通学の人も帰れなくて。
で。
急遽、烏野まで徒歩圏内の部員の人達の家に泊めてもらうことに。
何人かを適当に割り振られて、おれは影山んちかな?とか思ってたけど···
菅「んじゃ、日向。大地んちに帰るべ」
澤「帰るってスガ、お前は自分の家に帰れるだろ···」
なぜか、キャプテンの家にお世話になる事に。
菅「いいじゃん、日向も泊まるんだから1人くらい増えたって変わんないだろ?」
澤「それ、普通は泊めてやる側が言うセリフだ。まったく仕方ない、その代わり夕飯作り手伝えよ?俺んち今日、誰もいないんだからな」
菅「うぇ~い!じゃあ買い物して今夜は鍋にしようぜ!」
3年の、しかもキャプテンの家に···副キャプテンと3人で1晩とか。
勉強しろとかお説教されたり···しないよね?
菅「な!日向!」
「は、はひっ!···ゲホッゲホッ」
背中をバーンと叩かれて、思わずむせる。
澤「スガ···日向をあんまりド突くなよ。じゃ、俺んち帰ろうか」
コクコクと頷き、前を歩き出すふたりの後をついていく。
菅「なぁなぁ、今夜は恋バナで盛り上がるべ!」
澤「ないっての!明日も練習あるんだから、早く寝ろよ···」
菅「何言ってんだよ、せっかくのお泊まりだぞ?···大地、今夜は寝かせないぜ?」
澤「いや、頼むから寝かしてくれよ」
な、なんか大人の会話だ。
帰りがけに少し買い物をして、キャプテンの家に着くと男3人での食事の支度が始まる。
菅「日向、ちょい味見て」
「あ、はい!···美味しいです!」
澤「日向、ポン酢とゆずぽん、どっちがいい?」
「あ、あの、どっちでも···」
テキパキと動く菅原さんを見て、おれも家の手伝いとか少しやってれば良かったと、おれに与えられた唯一の仕事···大根をひたすらおろしながら後悔する。
キャプテン達を見てると、おれも年数重ねたら···影山達とこんな風に、あうん?って言うのか?
よくわかんないけど、同じ呼吸で物が言い合えるようになるんだろうか。
ムリかな?
影山だし、月島だし。
山口なら···とか。