第23章 未来へ繋がる願い ( 岩泉 一 )
岩「···そのまんまの意味だ」
『そしたら今、手を繋いでるのは及川君ってことになるけどいいの?』
岩「速攻離すけど、いいんだな?」
ニヤリ、と笑いながら繋いだ手を解こうとモゾモゾする。
『あ、ちょっと!それはズルい!』
岩「ズルくねぇよ、俺はクソ川と手を繋ぐ趣味はねぇし」
解けかけた手を、私からキュッと繋ぎ直す。
『私は及川君じゃないもん!だから、えっと···』
岩「お前の手を、俺が離すわけないだろ、バーカ」
ただ繋がれていただけの手を、今度は指を絡めて繋ぎ直す。
今までしてくれた事のない、暖かい繋ぎ方。
岩「嬉しそうな顔しやがって」
ポツリと言って、素っ気なく、また歩き出す。
でもね?
私からは、見えちゃってる。
···ほんのりと色付いた、耳が。
それを言えば、きっと、寒いからだ!とか言うんだろうけど。
私は気付いてるよ?
私のドキドキと同じくらい、ハジメもドキドキしてくれてるってこと。
だって。
絡めた指先が、小さく震えてるから。
岩「拝観するまで、まだまだ先が長ぇな」
『ゆっくり進めばイイじゃん?』
少しでも長く、一緒にいたいから。
岩「ずっと外にいたら寒いだろうが」
『そう?私は平気だよ?』
だって、心は···こんなにもポカポカしてるから。
岩「体温高いとか、子供かよ」
『子供かどうか、後で確認してみる?なんてね』
岩「ば···バッカじゃねぇの!何言ってんだお前は!及川かっ!」
『あ~!また及川君と同じにした!』
岩「うるせぇよ!」
こんな風に言い合える日々も、あと僅か。
『ずっと···離さないでね?』
いろんな願いを込めて、お願いをする。
岩「離すわけねぇだろ、お前の手を」
期待、しちゃうよ?
胸の奥で呟いて、人混みに押されたフリをして寄り添ってみる。
岩「あんま引っ付くなよ、歩きにくいだろうが」
『人混みなんだから、いいじゃん!』
岩「ったく、しょうがねぇヤツ」
私から見える耳は、まだ、赤いまま。
『寒いねぇ~』
岩「お前さっき、平気だって言ってただろ!」
『あ、雪だ···』
岩「だから帰るかって言ったのによ」
『帰らないってば!』
神様のところまでは、あと、もう少し。
私の願い事は···
~ END ~