第23章 未来へ繋がる願い ( 岩泉 一 )
『わぁ···やっぱり人が凄いたくさんいる···』
岩「だから言ったべや、今日はどこ行ったって人混みだらけだって」
『それは···そうだけど···』
だって、そういうの分かってても。
この新しい年の一日目を、一緒に過ごしたかったんだもん。
春高バレー県代表の大会で、惜しくも烏野に負けてしまい引退を余儀なくしたけど。
その後だって、後輩指導だとか、私の予備校だとかで予定がなかなか合わなくて···
だから、丸一日ずっと一緒に過ごすなら···今日しかなかったから。
岩「で、どうすんだ?帰るか?」
『···帰らない。意地でもお参りする!』
岩「今日お参りしなくたって、神様は逃げねぇよ」
『それでも、今日!』
ねぇ、気が付いてる?
一緒に学校生活過ごすのも、あと少しだけなんだよ?
春になったら、別々の大学なんだからさ。
···気付いてる?
それとも、気付かないフリ···してるの?
高校卒業しても、この関係が終わるわけじゃない。
けど、別々の学校生活が始まるのって。
やっぱり···寂しいよ。
岩「ったく。しょうがねぇな、お前は···ほら、行くぞ」
私の前に、スっと伸ばされた手。
手、繋いでくれるの?
瞬きを繰り返すだけの私を見て、ちょっとだけ照れ臭そうに横を向きながら、早くしろ、と続ける。
岩「こんだけ人混みの中を歩くんだ。はぐれたら、探す方が面倒だからな」
差し出された手に、そっと自分の手を重ねると、そのままキュッと掴まれた。
岩「どんなに引っ張られても、ぜってぇ俺の手を離すんじゃねぇぞ。わかったな?」
『うん!そっちこそ、離さないでよね?』
わざと茶化しながら返して、手を繋いで歩き出す。
ずっとバレーボールを続けていて、カサついた手。
どれだけたくさんのボールを打って来たのかは、分からないけど。
私はこの、大きくて、カサついた手が好きだ。
普段は及川君たちが茶化すから、手なんて···なかなか繋いでくれることなんてないけど。
だからこそ、こんな風に人前で手を繋いでくれるのが嬉しい。
岩「なぁに、ニヤニヤしてやがる」
振り返って私の顔を覗きながら、不貞腐れたように小さく息を吐く。
『別に~?』
岩「お前···最近クソ川みたいだぞ?自覚あんのか?」
『え~?及川君みたいとか、それどういう意味よ?』