第21章 赤鼻のサンタクロース ( 夜久 衛輔 )
~ epilogue ~
あの雪の日から、1週間···
「ぶぇっくシッ!!」
リ「夜久さん···汚いッス」
「しょうがねぇだろ···風邪ひいちまったんだから」
あのクリスマスの夜。
調子に乗って薄着のまま、しばらくあの場で紡と過ごした。
風邪ひいちゃうから!って言う紡に、お前がいるから大丈夫だ!とか、カッコつけていたまでは···よかったんだけど。
翌朝から、鼻水の大洪水に見舞われるとは予想してなかった。
帰ってからすぐ風呂はいって温まったっつーのに、なんでだよ!
「へっくしょい!!」
黒「やっくん···汚い」
「うるさいっての!」
ニヤリとするクロにそう言って、チーんと鼻をかむ。
黒「そんなに風邪っぴきだったら、休んでもよかったんだけど?」
「そういう訳には行かねーんだよ。あのアホを鍛えないとだからな」
思い切りリエーフを指差して、また鼻をかむ。
『こんにちはー!』
研「あ、紡が来た···マスクなんかして、紡も風邪?」
黒「おや~?」
部活見学しに来た紡を見て、クロはオレにニヤリと視線を送る。
リ「つーちゃん!ねぇねぇ、今日の差し入れなに?!」
大きな尻尾を振りながらはしゃぐ大型犬のように、リエーフが紡に駆け寄っていく。
「あンのヤロー。またつーちゃんとか呼びやがって···オイこら!リエーフ!許可なく紡に近寄るな!バカが伝染るだろ!」
リ「なぁんで夜久さんの許可がいるんですかァ?」
「なんでもだ!」
『アハハ···でもリエーフ?風邪が伝染ると悪いから、あんまり近寄らない方がいいかも』
研「やっぱり紡も風邪?」
ポソッと言う研磨に、紡が笑いながら頷く。
『バイト辞めて気が抜けたら、風邪引いちゃったみたい』
···そう。
結局、紡はあの店でのバイトをやめた。
理由は、勉強を最優先にしたいっていう表向きの理由で。
本当は、まぁ、いろいろだ。
もともと紡の親はバイトをする事をよく思ってなかったから、紡がバイトを辞めるって言った時、協力的だったらしい。
研「紡、バイト辞めたの?」
『うん。まぁ。いろいろあったし···』