第21章 赤鼻のサンタクロース ( 夜久 衛輔 )
部活優先なのを許してくれるからじゃない。
全て含めて、オレを理解してくれてるからだ。
「紡···やっぱり襲っても、いい?···キス、したい」
抱き寄せ合う体を離して、まっすぐ紡の目を見た。
見つめあったまま、紡の瞳が揺れる。
紡は何度か瞬きを繰り返して、やがて···そっと目を閉じた。
それを見て、また···胸の奥がドクンと鳴る。
ゆっくり···触れるだけのキスを落とす。
紡の唇がピクンと震えて、ドキドキが増して行く。
触れたばかりの唇を離して、コツんとおでこをくっつければ···それがオレ達のキスの終わりの合図。
本当は、もっと···なんて、欲張りかな?
『ね、やっくん···もっと、とか言ったら···ダメ?』
キュッとオレのジャージを掴み、紡が顔を上げる。
···ダメなわけ、ないじゃん。
フッと笑って頭をかき寄せ、飽きることなく唇を寄せた。
『ん···』
寒さなんて、どうでもいい。
この暖かささえ、感じられれば···
でも···
やっぱ寒い!!
「···っくしゅん」
パッと体を離して、耐えられなかったクシャミをする。
ヤバ···せっかくの雰囲気が台無しだな。
「ゴメン···」
紡はそんなオレを見てクスクスと笑いだし、ちょんっとオレの鼻をつつく。
『やっくん、鼻が真っ赤になってる。トナカイさんみたい』
寒いんだから仕方ないだろ!とオレも笑って返す。
「そんなこと言ったら、紡はサンタクロースだな。音駒の真っ赤なウォーマー着てるんから」
お返しとばかりに言ってやると、紡はオレの頬に手を当てて微笑んだ。
『サンタクロースは、やっくんだよ。私だけの···サンタさん。だから絶対、毎年いてね?』
「···言われなくとも」
紡の手に自分の手を重ねながら抱き寄せる。
「キス、やり直しても?」
瞼を閉じて、オッケーの合図。
まつ毛をひと撫でして、紡にオレはまた唇を落とす。
いつまでも終わることのないオレ達の甘い時間。
そんなオレ達を、ひらひらと舞い落ちる雪の中で···公園の雪だるまが静かに微笑んでいた。