第20章 未来予想図 ( 東峰旭 生誕 )
『分かった。おばさん、キッチン借りてもいいですか?と、いうより、私にお料理教えて下さい』
「あらまぁ、そんなこと言われたら嬉しいわぁ。何でも聞いてちょうだい!」
なんだろう、この喜び方は。
『旭、ちょっと待っててね?食べれそうなもの作ってくるから』
「あぁ、うん···ありがとう···」
母さんと紡が部屋から出て行き、また、静寂がやってくる。
すっかりぬるくなったタオルで、もう1度顔を拭いてベッドに横になる。
2回ほど寝返りをして、大きく息を吐く。
喉、乾いたな。
さっき母さん達に頼めばよかった。
でも、タオルも濯ぎたいし。
ゆっくりなら、行けるだろ。
重い体を起こし上げベッドから立ち上がる。
フラつく足元に気を配りながら階段を降りていくと、早くも出汁の香りや、ご飯が炊けるような香りがして来て···そっとキッチンを覗いてみる。
エプロンをした母さんと、エプロンをした紡の後ろ姿が見えて···顔が緩んで行く。
ふたり並んで料理を作る、後ろ姿。
いつか、それを毎日見られる日が来るだろうか。
···なんて。
そんな風に思ってしまうのは、この熱のせいなのだろうか。
それとも···
ホントに、近い将来···とか。
「あ、紡ちゃん。旭はネギ苦手だから、こうやって果てしなくみじん切りにしないとダメよ?」
『そうなんですか?風邪とかに効きそうなのに、子供みたい』
···母さんそれ、バラしたらダメなやつだから。
「旭はいつまで経っても子供よ?あ~んな大きい体して、人の言うこと聞かないで熱出してるんだから」
···母さん、もうヤメテ。
いつか···
いつか近い将来のカタチが垣間見えて嬉しくなる反面、何となくふたりのやり取りに居心地が悪くなり···そっと立ち去る。
フラつきながら階段を上がり、オレの小さな将来のカタチが確立した予感に、口元が緩んだ。
~ END ~