第19章 たとえばそれは、春風のように ( 澤村大地 生誕 )
チクッと呟きながら、紡がケーキにロウソクを立てて行く。
『よし、完璧!さすが私』
旭「じゃ、ロウソクに火をつけるよ」
旭がひとつずつに火を灯していき、全部に火がついた時、スガが部屋の明かりを消した。
『大地、お誕生日おめでとう』
菅「おめでとー、大地!」
旭「おめでとう!」
なんか、急に照れるな。
まさかあの電話から、こんな展開になるとは予想もしてなかったから。
「あ、ありがとう、みんな。じゃ、吹き消すよ」
『あ、待って大地。ロウソクをふぅってしたらさ、3秒だけ幸せを噛みしめて?ね?』
「3秒?よく分からないけど···分かった」
『菅原君も、ロウソク消えたら3秒だけ電気つけるの待ってあげて?』
菅「了解!」
『大地···ロウソク吹いていいよ』
「じゃ、吹き消すよ?」
暗闇のなかで、ロウソクの炎だけがゆらゆらと揺れる。
確か、1度で消えたらハッピーな事が起きるとか聞いたことがあるな。
大きく息を吸い込んで、思い切り揺らめく炎を吹き消した。
3秒、幸せを噛みしめるんだったよな?
この歳で、誕生日を祝って貰えるとか···俺はいい友達を持ったな。
これで、3秒···かな?
『大地?』
「ん?」
『大好きだよ』
「う、ん···んっ?!」
い、いいいいいい?!
いま、何が起きた?!
いや、いま···いまのって!!
菅「電気つけるよー?」
スガがそう言って、電気のスイッチを押した。
菅「あれ?なんでそんなに真っ赤になってんの?感動し過ぎだべ?」
旭「あははっ!ホントだ!」
···何とでも言ってくれ。
いま俺の心臓は···それどころじゃない!!
チラリと紡を見れば、口元に人差し指を当てて微笑んでいる。
じゃあ、やっぱりさっきのは···
そう考えるだけで、少しだけ触れた唇の感触を思い出し···口をパクパクさせてしまう。
そんな俺とは逆に、紡はスガと旭に手伝わせながらケーキを切り分けている。
とんでもないプレゼントを、受け取ってしまった。
まだ走り続けているドキドキを感じながら、俺はその光景を眺めていた。
~ END ~