第18章 雪···ひとひら ( 城戸 桜太 X'mas特別番外編)
「差し支えなければコーヒーくらい俺が、」
「とんでもありません!城戸先生にそんなこと」
立「そうそう!それならオレがみんなの分を」
「いえ、ここは1番新人の俺が、」
「「 お願いしま~す 」」
やられた。
語尾にハートマークが飛び交うような返事に圧倒され、深夜の廊下に、俺のため息が響く。
「ほんっとに、敵いませんね。では、忘れられない極上のコーヒーを御用意致しましょう」
まるで執事のように恭しく頭を下げ、みんなでナースセンターへと歩き出す。
「あ、そうだ。お茶菓子いりますよね?ロッカールームに取りに行って来ましょうか?」
立「あぁ、それなら城戸先生?さっきの、」
「あれはあげません!···あとで1人でこっそり味わいます」
当直室に戻ったら、ゆっくりと···ね?
立「えぇ、城戸先生のケチ~」
「何と言われても、ダメ!絶対!」
俺達のやり取りを聞いて、看護主任が笑い出す。
「ほら、城戸先生?やっぱりナイスコンビでしょ?」
「やめてください、立花先生とナイスコンビとか」
立「なになに?何の話?オレと城戸先生がナイスコンビだとか照れるなぁ」
「···バッチリ聞こえてるじゃないですか」
立「拗ねるなよ、相棒?これからも仲良くバディ組もうぜ?な?」
「お断りします。肩も組まないで下さい」
「よっ!ナイスコンビ!」
「何なんですか、その掛け声は···」
···神様。
いや、今夜はサンタの方がいいのかな?
もし、俺にも現れてくれるなら···願い事はふたつ。
立花先生を、もう少し大人らしいドクターへと変えてください。
あと、もうひとつは。
もう1度だけ、梓との時間を。
ふと足を止め、廊下の窓を少しだけ開けてみる。
そっと手を伸ばした俺の手のひらに、はらり···雪が舞い降りた。
梓。
いつの日かまた、キミと雪の中を寄り添いながら歩こう。
お互いの温もりを感じながら。
そんな日を夢見て、溶けていく雪を見つめる。
立「城戸先生~!寒いから、はーやーくー!」
俺はお母さんか!
子供のような立花先生の声にも構わず、まだ雪は···降り続いていた。
梓···今夜はもう少し、長くなりそうだよ。
~ END ~