第17章 悪夢は何度でもやって来る ( 烏養 繋心 )
ー 烏養君、これ烏養君のクラスのプリント。うちのクラスのを取りに行ったら、先生が届けてくれって ー
憧れのマドンナちゃんから呼ばれたと思ったら、委員会の用事···
ま、そりゃそうだ。
オレには高嶺の花で、普通じゃ声なんて掛けられねぇから委員会活動とかダセェ事やってんだ。
「あ、あぁ、悪いな。忘れてた···クラス離れてんのにサンキュ」
そう言いながらプリントを受け取ろうとして、もし、もし···手が触れたら、とか。
勝手にドキドキしながら手を伸ばす。
ほんのちょっと指先が触れて···お互いに妙に意識しちゃって···とかいう展開にはならず。
ごく普通にプリントを渡されガッカリする自分に笑っちまう。
ー 確かに烏養君に渡したからね?じゃ···キャッ ー
ー っと···大丈夫?ごめんね、俺がよそ見してたから ー
ー あ···城戸君··· ー
桜「桜太でいいよ?城戸はもう一人、このクラスにいるから、ね?」
···現れやがったな城戸桜太。
柔らかい物腰。
おだやかな見た目。
サラサラの髪に、きめ細かい肌。
女子には分け隔てなく優しく振る舞い、
けど、下心なんてない。
女子は全員、コイツを王子様と信じて疑わねぇ。
ケッ!
オレは知ってっぞ!!
こんな風に学校でモテ男気取りのヤツが、家ではチビっこい妹とママゴト遊びしたりしてんのをなぁ!
桜「うん、気にしなくていいから大丈夫。俺もそう呼ばれた方がわかりやすいから」
出た出た···王子様スマイル。
オレは知ってっぞ!!
そのスマイルの裏側に、恐ろしい笑みがある事をなっ!
ー 繋心、邪魔 ー
来た···
もう一人の悪魔。
桜「慧太、使い終わったらちゃんと返しに来るって約束だっただろ?」
慧「ワリィワリィ!今から行くとこだったつーの」
こっちは桜太の双子の弟···慧太。
王子様と呼ばれる桜太とは逆に、ワイルド気取りで、男女関係なく扱いは粗雑···
なーのーにー!!
なぜか女子からは、まるで海賊王みたいだと言われ人気がある。
···世の中おかしい。
オレよりちょっとばかしイケメンで?
いや···そこは敢えて言おう。
オレと変わらずイケメンだと!
同じ男なのに、どうしてこうも別の生き物のように扱われんだ?