第15章 スポーツの秋?それとも恋の秋?!( 黄金川貫至 )
ー 放送席より各ブロックにお知らせします。只今のゴール、稀にも見られない実にシビアな判定の為、只今より審判員による審議に入ります。結果につきましては、もう暫くお待ち下さい ー
二「はあっ?!・・・ま、またかよ!」
「そ・・・ッスね・・・」
お互いに倒れ込んだまま動かず、呼吸も荒いまま放送だけを聞いている。
どれだけの時間が過ぎたのか、ようやく乱れた息が落ち着いてきた頃に聞き慣れた声で放送がかかった。
ー 大変お待たせ致しました!先程のブロック対抗リレーの結果を発表します!審判団の審議の結果1位でゴールしたのは・・・赤ブロックのアンカー黄金川です!! ー
オレ・・・が?!
「・・・っしゃァァァァ!!」
二「マジかよ~・・・逃げ切れなかったって事か?!あ~クソっ!」
ワァッという歓声が聞こえ、オレ達はやっとこ体を起こす。
1位でゴールしたら・・・
リレーが始まる前の約束を思い出し、身震いする。
オレの本気の勝負は、これからだ。
二「そろそろ・・・行くか?」
「そうッスね」
同時に立ち上がり、駆け抜けて来たゴール前まで歩く。
そこで審判団に1位と2位の印の旗を受け取り、オレ達はブロック席に戻った。
ー 黄金川!お前スゲェな!! ー
ー ラストスパート!カッコよかったよ!! ー
戻りながら、すれ違う同じクラスのヤツらに肩を叩かれ喜ばれる。
『・・・お帰りなさい黄金川君!それから、お疲れ様!』
「お、おぅ・・・」
城戸からも声をかけられて、この後の事を考えて・・・変に意識してしまう。
ー これから閉会式やって、その後みんなで片付けすんぞ!ー
3年のブロック長の掛け声に周りのみんなが大きく叫ぶ。
そんな中、オレは・・・
「城戸、全部が終わったら・・・部活の前に体育館の裏で・・・待ってるッス」
城戸の耳元で小さく言って、返事を待たずに・・・その場を離れた。
余計な事を考えないように、あっちへ走り、コッチへ走りと一心不乱に片付けをする。
・・・賽は、投げられた。
後は出る目が、吉となるか・・・はたまた、凶と出るか。
オレは自分の担当する場所の片付けが終わると、人知れず体育館の裏へと移動した。
この時、オレの立ち去る姿を見られていたとは・・・気が付いていなかった。