第14章 流麗な夢をキミと ( 菅原 孝支 )
そんな事を考えながら大地を見れば、大地も同じ事を思っていたのか苦笑を見せた。
『絶対見せてくれないんです。だから今日こそ清水先輩と片付けをしながら見ちゃおうかと』
軽くガッツポーズを見せながら笑う紡ちゃんに、あんな物見られたら大変だなと大地と視線で会話を交わす。
澤「今なら間に合う、かな?」
「そうかも?」
『何がですか?』
澤「えっと、早めに始めれば部活迄には終わるかな?ってことだよ」
軽く笑いながら紡ちゃんに言ってるけど、大地、目が泳いでるって。
「うちの部に、掃除専門の執事とかいたら···慌てなくていいのにね」
そう言って笑うと、あっ、と小さく呟いて、紡ちゃんがイタズラに笑った。
『だったら今は、私が大地さんとスガさんのメイド係やりますよ?だから···なんなりとお申し付け下さいませ、ご主人様?』
制服のスカートを摘みながら、紡ちゃんが恭しくお辞儀を見せる。
それが、あの日見たメイド姿と重なって···
「では紡、部室の掃除を心して行なうように」
『かしこまりました、ご主人様』
紡ちゃんはそう言ってからオレ達を見上げ、フッと笑いをこぼした。
『なぁんてね、スガさん?誰より先に入って怪しい本を発掘しまーす!さ、行きましょう!!』
澤「あ、おい!」
「ちょっと?!」
紡ちゃんが自分の腕をオレと大地にギュッと絡ませ、早く早くと前に進む。
やっぱり夢の時間は、夢のまま···か。
『早くしないと田中先輩が来ちゃう~!』
これが現実。
でも、こんな現実もいいかな?なんて笑いながら。
「紡ちゃんにアレを見つかったら、田中はいいとしてオレ達の品位を疑われちゃうな」
そう小さく大地に耳打ちをする。
澤「···確かにな。何としても、それだけは避けたい」
「じゃ、急ぎますか!」
澤「おう!」
絡ませられた腕を抜き、紡ちゃんの手を掴んでオレ達は駆け出した。
あの夢の時間は、あのままで。
いつか···オレがホントの夢をずっと見せてあげるから。
「いつか、わからないけどね」
そう呟き、紡ちゃんの手を強く握った。
この手がずっと、オレの手の中に···ありますように。
小さく祈りを込めて。
~END~