第9章 月夜に咲くのは甘い花 ( 縁下 力 )
花火大会の会場に着くと、この人達は普段どこに潜んでいるのだろうというくらい、どこを見ても、人、ひと、ヒト・・・で溢れていた。
縁「ほら、はぐれないように・・・」
スッと差し出された縁下さんの手を握り、隣を歩く。
澤「予想はしてたけど、凄い数の人だなぁ」
澤村先輩も、その人混みを歩きながら先へと進む。
菅「とりあえず、あの辺て1回止まろうか。田中と西谷に暴走しないように釘刺しとかないとだし」
菅原先輩の発案に澤村先輩が頷き、脇に逸れた場所に一旦集まった。
清「木下、成田。ちょっと打合せしたいから、他のみんなを捕まえてて」
そう言った清水に手招きをされて、3年生組と縁下さん、それからなぜか私が呼ばれた。
『あの、打合せっていうのは・・・買出し班とか、そういうのですか?』
これだけの人混みを、バラバラで歩き回るのは、はぐれてしまうことも考えられるから。
きっとマネージャーを含めたみんなで手分けでもするのかな?と、そんな事を考えていた。
澤「それも、いい案なんだけどね。不正解!」
清「ここから先は、縁下と城戸さんは別行動」
『え?どういう事ですか?』
突然の切り離し発言に、私は瞬きを繰り返した。
澤「本当なら、2人で来たかったんじゃないか?っていう、清水の提案だよ?」
菅「そうそう、オレとしては可愛い浴衣姿の紡ちゃんと一緒にいたいんだけどね」
縁「・・・スガさん?」
あはは・・・と後退りをしながら、菅原先輩はいいじゃん可愛いんだから、と繰り返した。
清「私も急な用事で宿題組の面倒見れなかったし、縁下も宿題組に付きっきりだったでしょ?だから、あとの事は私達3年が面倒見るから」
『でも・・・それじゃ申し訳ないです。大変だと思いますし』
バレー部の問題児は、2年の2人だけじゃない。
1年組だって、それなりに暴走組が・・・
旭「大丈夫だよ。いざとなったら、大地がカミナリ落とすだろうから。だから、せっかくなんだし、2人で回って来なよ?」
どうしますか?と、さり気なく縁下さんを見上げると、縁下さんも少し戸惑っているようだった。
縁「・・・いいんですか?」
菅「いいよ。アイツらに2人が居ないことを気付かれたら、オレ達も適当にはぐらかすからさ」
澤「だな。それに縁下だって・・・アレだろ?」