第8章 赤い糸の行き先 (及川 徹)
岩「うだうだ言ってねぇで、早く保健室行ってこいよ!」
「もぅ!岩ちゃんすぐ怒るんだから!・・・あ、アハハ・・・行くよ、行ってくるから!今すぐ行くからゲンコツ下ろしてお願い!」
中学3年になったばかりのある日、朝練で指に違和感を感じて保健室に行く事になった。
「みくちゃんセンセー、いるぅ?」
軽く声をかけながらドアを開け、中にいる養護教諭の背中にペタリと抱き着く。
「あら及川。用事がないなら教室戻りなさい?」
振り向きもせずオレを軽くあしらうみくちゃんセンセーは、今日も冷たい・・・
「用事があるから来たんだって!ほら見て?オレの指!ほら!ほら!」
違和感のある指を顔の前に突き出し、手当してよ~と甘えた声で擦り寄る。
「はいはい、突き指?湿布とテーピングでいいわね?はい。どうぞ?」
棚からそれを取り出しポンッとオレに渡すと、センセーはまた机に向かってパソコンを操作する。
「えぇーっ、手当してくんないの?職務怠慢じゃない?ねぇ、手当してよ~」
オレが駄々を捏ねるように言うと、みくちゃんセンセーはキィと音をさせながら椅子ごと振り向いた。
あ、やっと手当してくれる気になった?
「及川?それ系のケガは、私より及川の方が詳しいでしょ?湿布位なら貼ってあげるけど、テーピングは自分でやって?」
職務怠慢だぁ!!
そう叫んで、背中を向けたみくちゃんセンセーにぺたりと抱き着く。
「みくちゃんセンセー?何でオレにいつも素っ気ないのかな?」
「面倒臭いからよ」
即答?!
しかも面倒臭いって・・・
「ヒドイ・・・」
「そういう所も面倒臭いのよ。及川さ、女子に人気あるって事は、顔だけはいいんだから、もっと内面を磨きなさい?わかった?」
酷すぎる・・・
「みくちゃんセンセー・・・」
「うるさい。あんまりしつこく仕事の邪魔するなら、今すぐ岩泉呼ぶわよ?いい?」
「岩ちゃん呼ぶとか超反則・・・ってかさ、みくちゃんセンセーって岩ちゃんお気に入りでしよ?!好きなの?!ねぇねぇ?」
「岩泉?そうねぇ、どっちかと言えば好きよ?だってカッコイイじゃない?」
鈍器で頭を殴られるって、きっとこういう感じなんだと思えるくらいの衝撃だった。
「みくちゃんセンセー・・・大胆発言過ぎてオレ立ち直れないかも・・・」