第7章 〖 肌の記憶 〗 人気投票3位記念 城戸 慧太
「慧太、次はいつ会える?」
ベッドの周りに脱ぎ散らかした服を拾い上げながら袖を通していると、後ろから、まだ微睡んだままで声をかけてくる。
「さぁてね・・・高校生は色々とお忙しいんだよ。それに、次の約束はルール違反じゃねぇのか?」
そう・・・
オレ達は・・・次の約束は、絶対にしない。
それがオレ達にとってのベストな関係。
その日、その時。
お互いの都合が合えば会う。
映画や飯に付き合えと言われれば付き合うし。
抱けと言われたら・・・抱く。
オレにとっちゃ、映画も飯も抱くのも・・・どれも同じ事。
「お忙しい・・・って、高校生なのにお盛んね?」
ベッドから起き上がり、オレを軽くからかうように笑う。
「お盛んなのはお互い様だろ・・・若奥さん?」
「ちょっと慧太?現実に引き戻さないでくれる?それに若奥さんだなんて・・・」
「間違っちゃいねぇだろ?新婚なんだから。ケド・・・いいのかねぇ?新婚の若奥さんが、夕飯も作らずにオレみたいなガキとこんな事、しててよ」
わざと音を立ててキスを落とすと、もう1回、もう1回と、せがまれる。
「ねぇ・・・まだ、時間あるでしょ?」
恍惚な表情を見せながら、抱き着いてくる深月を無理やり剥がし、乱れた服を正す。
「残念ながら、タイムリミットだ。帰りがけに買い物してぇしな」
「買い物と私と、どっちが大事なのよ」
はい、出た。
女の大半が何かと自分を比べて選ばせたがる。
「買い物と深月?どっちも選べねぇな。オレが最優先するのは、可愛い妹だけだ」
「もう・・・それを出されたら引き止められないじゃない」
拗ねながらも体を毛布で隠し、横を向いた。
「その妹がもうすぐ誕生日だからな。買い物出来るうちにしとかねーと、ってよ」
着替えながら話す言葉に、誕生日かぁ・・・と深月が漏らす。
「ねぇ慧太。お小遣いあげるよ」
「いらね。だいたいそんな、」
ヨゴレタ カネナンテ イラネーヨ・・・
「そんなモン貰っちまったら、対等じゃいられなくなるからよ。それに、小遣いなら親から貰ってんから心配すんな。どうせくれんなら・・・コッチ」
もう1回近寄り、頭を抱き寄せ深く口付ける。
「ん・・・バカ、毛布ズレる・・・」
「何で隠すかねぇ?オレはもう隅々まで知り尽くしてるってのに」