第1章 向日葵と薔薇
「帰さねぇ。今日はあったかい飯食わせてやる。」
「いーらーなーいー。コンビニでいいんだー!」
「よーし、美味い食わせてやるからな。」
あれよあれよと言う間に部屋に連行され、座らされた。
いい匂いの温かい肉じゃがとほうれん草のおひたし、白いご飯に味噌汁と焼き魚が出てきて、目の前に広がる理想の食卓によだれが止まらなくなり、降参した。
そのままおかわりまでして、おまけにビールまで呑んでしまった。
目の前で楽しそうに話を聞いていた中也さんも、流石に私が缶ビール3本目に手を掛けたのを見て止めに入ってきた。
「えっ、なんれすかぁ~?」
「菜那、もう止めとけ。」
「やらぁ~もっと呑むの~。」
「……疲れてると酔いやすいからなぁ、出した俺のミスか。」
「うぅぅ、明日も仕事、明後日も仕事、……彼氏もいないしなんにも最近幸せなことない!」
「ほら、酔っ払い。送るから今日は帰れ。また飯は今度作ってやるから。」
中也さんが私の腕を掴んで立つのを手伝ってくれた。だけど、なんとなく帰りたくなくなってしまった。
私のバックと上着を取ってくれた中也さんに、勢い良く抱きつく。
「うおっ…菜那、酔いすぎだぞ?しっかりしろ。」
「……中也さんいい匂い。」
細身なのに男らしい胸板、ふわりと香るいい匂いに思わず擦寄る。
中也さんは困ったように、私の頭をひと撫ですると、引き剥がされた。