第2章 過去
『んん...ん』
一人の少女が目を覚ます。その子の名前は優美という。
『...ねむい』
寝起きはあまりよくないようだ。ボーっと寝たまま天井を見ている。しばらくすると目を擦りながら、身を起こして支度を始めた。
『ティモーー!!』
優美は着替えが終わると部屋を飛び出し、小さいながらも一生懸命走って、ある部屋の扉を思い切りあけて叫んだ。
「おはよう、優美」
そこには穏やかに笑う老人がいた。
『おはよう、ティモ!』
優美は老人に近づくとにっこり笑い、膝の上によじ登り座る。
『あのねティモ、今日は中庭にいきたいの!お花がね、きれいなの』
「わたしがいるから今日はいいよ。ただし、中庭だけ。わかったかい?」
『うん、わかった!』
「いい子だね」
優美は一生懸命、少し舌たらずな説明で老人に話しかける。それに答えた老人は、優美が元気に返事をすると頭を優しく撫でた。そこにノックの音が聞こえてきて、老人が答えると扉が開いた。
「9代目...お、優美もいたのか?」
「家光か」
『いえみつ!』
優美はにっこり笑って、手を振る。扉を開けたのは、家光と呼ばれる男だ。優美は二人を交互に見てから笑ってこう言った。
『優美、お外行ってくる!』
ゆっくり膝から降りると、タタタと走り扉から出ていった。
「あの子はとてもいい子だね」
「はい、賢いですね。今も話がしたいのをわかって出ていったように見えました」
「そうだね...。それでどうしたんだい?」
二人は話し始める。その頃部屋から出た優美は中庭に来ていた。
『きれい...』
近づいて、花をよく見れるようにしゃがみこむ。しばらく見ていると足音がした。誰だろうと振り向くとそこにいたのはちょっと怖い顔をした男の子だった。
『だぁれ?』
優美は見たことのない人物だったので問いかけるが返事はない。少し考え込んだ優美は何を思ったのかその男の子の手を掴み、隣にしゃがませる。
「!」
『お兄ちゃんもこのお花見に来たんでしょう?綺麗だよね』
にっこりと笑う優美に男の子は、無言だがどこにも行くことなくそこには静かな時間が流れていた。