• テキストサイズ

君の計算を狂わせたい【黒バス/花宮】

第11章 ぬくもりの宿




「バスケコートでのこと?」

「……ああ」


花宮が遠慮がちに頷く。

それから、また視線をゆっくりと泳がせて、私のと交わる。

と思うと、またそらされた。


「少し取り乱した……悪かったな」

「ふふ……」

「…………なんだよ」

「いや、花宮が改まって謝ってくるとは思わなくて」


花宮が舌打ちをしたので、慌てて謝ると「うぜーから何回も謝るな」と怒られた。

とっさに謝ってしまうのは癖みたいだ。


「じゃあ、やっぱり本当なの?」


花宮は少し言い淀んでから、「ああ」と頷いた。

本当なのか、というのは花宮が冗談めかして言った、学校や家がなくなっている、ということについてだ。

ソファーの前の床に、花宮はあぐらをかいて座っている。

俯いて、自分の指を組んだり、離したりしている。

表情は見えない。

けれど、その肩は心もち落ちているように見えて、花宮であっても帰る場所がないというのはけっこう堪えることなんだろうな、と思えた。


私はソファーから下りて、花宮の前にペタンと座る。


「私も協力する」

「協力?」


花宮が顔を上げて、まぶたの重そうなその目と合った。


「花宮の家がなくなったこととか、そういうの、私も一緒に探す。だから……それまではうちにいてよ」


帰る場所のない彼を放っておけないとか、そういう気持ちもあったけど、家にこのままいて欲しいというのは紛れもなく自分の願望だった。

花宮のため、というより、私が花宮と一緒にいたい。

ふはっと軽い笑い声があがる。


「そうだな…………じゃあ、しばらくの間お世話になります」

「……うん!! これからよろしく!!」


花宮は立ち上がり、少し口の端を持ち上げる。

花宮って意味深な笑みを浮かべることが多いなぁ、なんて呑気に考えていると、彼はとんでもないことを言って去っていった。


「これから同居人になる俺から一つアドバイスをするなら、かっこつける時は鏡見てからにしたほうがいいぜ」

「え……?」


彼の言葉に、思い出す。

私、鼻にティッシュつっこんだままだった!!

さっきまでのやりとりを鼻ティッシュしたままの自分が言っているのを想像してしまうと……

しばらく悶えずにはいられなかった。


/ 50ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp