第11章 ぬくもりの宿
「信じらんねぇ」
ため息が降ってきた。
見上げると、呆れたような花宮の目。
いつの間にかリビングに戻ってきたらしく、私はソファーに横になっていた。
「鼻血吹き出してのぼせるとか、本当にそんなやついるんだな」
「鼻血!?」
思わず勢いよく起き上がると、くらりと目眩に近いものに襲われて、私はよろよろと頭をおろす。
鼻のあたりを触ってみると、恐ろしいことに、鼻の穴に詰め物がされていた。
たぶんティッシュだろうけど、私は今そうとうに恥ずかしいことになっているのだろう。
今さらだろうけど、私は鼻を手で隠して花宮を見上げる。
「あの……色々ごめんね」
「ああ、さすがに風呂でぶっ倒れられるのはもう勘弁だな」
「うぅ……ごめんなさい」
「何回も謝らなくていい。水汲んでくるから待ってろ」
台所へと消えていく花宮を見届けて、私は息をつく。
またやらかしちゃった。
花宮がからかってきたことに原因があるとはいえ、この歳になって鼻血を出してぶっ倒れるのはいかがなものか。
その辺にほっぽってあった洗濯物を着せてくれたのか、私はパジャマがわりにしていたTシャツと短パンを着ていた。
「うぅ……」
消えてしまいたい。
「まだ具合悪いのか」
私がうずくまっていたからか、台所から戻ってきた花宮に、そう声をかけられる。
「……ううん、大丈夫」
「なら具合悪そうにしてんなよ」
「ごめん」
「だから、何回も謝んな……水飲んで休んでろ」
なんか、花宮が優しい。
「……ありがとう」
受け取った水を飲むと、だいぶ落ち着いた気がする。
そろそろ鼻のティッシュを取りたいな……と考えていると、花宮が珍しく言いにくそうに、「さっきのことなんだが……」と話しかけてきた。
「さっきのこと?」
っていつのことだろう。
目で促すも、花宮は視線を下げて、どう言おうか悩んでいるようだった。
そうか、さっきのことって……