第11章 ぬくもりの宿
シャワーを止めて、湯船に入ろうとしたところで私は再び固まることになった。
我が家のお風呂は狭い。
お風呂場に比例するように、浴槽だって狭い。
つまるところ、この浴槽に二人入るなんて無理なのだ。
ええ、無理なんです。
こうして密着しないことには。
「あの、一緒に入る必要あったかな?」
「さぁ?」
「さぁって……」
花宮の足の間にちょこんと座る形で私はかろうじて湯船に浸かっている。
体を癒す余裕は私にはない。
ええ、本当に。
後ろから堪えきれないというような笑い声がもれた。
……これは怒ってもいい気がする。
いや、それで私一回失敗してるからなぁ。
「っ、ちょっと……!」
するりとお腹に腕が回ってきて、私は花宮の方に引き寄せられた。
ぎゅっと体が密着する感覚。
触れる肌が熱くなる。
右肩に花宮の顎が乗っかった。
「甘えさせてくれるんじゃねーの?」
低く囁かれる声。
頭がくらくらして目眩を起こしそうだ。
むわっとした湿気を多分に含んだ空気に包まれる。
いや、まって、これ、本当に……。
ぐるぐるする思考は、花宮の焦った声を断末に、ふらりと途切れた。