第9章 どうなってやがる(花宮side)
花宮side.
「それにしても、よくこんな場所知ってたね。私でも知らなかったのに」
「この公園はバスケコートが併設されてんだよ。つっても、半面サイズのが一つだけだけどな」
「へぇ、バスケコート……」
越智はきょろきょろと視線を動かす。
バスケットコートは、公園の中でも入り口から一番奥まった場所にあるので、ここから視認することはできない。
俺達は、走り回る子どもに気をつけながら、広場を横切った。
この公園は、坂道に三つの広場が段々畑のように段差状に並んでおり、それぞれの広場が階段でつながれている。
上から順番に、何もない砂利の広場、遊具広場、一番下にバスケットコートとテニスコート。
ちなみに、俺達が入ってきた広場から遊具広場には、すべり台が取り付けられている。
俺達はすべり台の横に設置された階段を下りる。
「遊具とか、けっこうあるんだね!」
隣を歩く越智が、広場に散りばめられた遊具を見て目を輝かせる。
まさか遊びたいとか言いださないだろうな、と心配したが、それはどうやら杞憂に終わった。
コートは周りを金網で囲まれており、公園の中でも独立した場所となっている。
「あ、ボール転がってるじゃん! 今日ヒールない靴で来てよかった〜!」
金網の扉を開けながら越智がそんなことを言ったので、俺は尋ねる。
「お前、バスケ経験者だっけ?」
「うーん、授業でやったくらい?」
「はぁ……」
「ねえ、ちょっとやろうよ!」
越智がコートの隅に転がっているボールを拾って、バウンドさせはじめる。
打点がずいぶん高い。
「私からボールを取ってごらんなさい!」
得意げに眉を上げて、挑発してくる。
片手を前に出して、もう片方の手でボールをつくのだが、すぐにボールは足に当たってとんちんかんな方向に転がっていった。
「いったぁ……」
足を押さえてしゃがむ越智を見て、思わずため息をつく。
「下手にもほどがあんだろ」
バカのことはほっとき、俺はかばんを下ろして転がっていったボールを追いかけた。
拾って、シュートを打つ。
ちょうどスリーポイントのあたり。
ボールが綺麗な弧を描いて、シュッとリングを通った。