第67章 【妖怪】×【秘密のある少女】
「探した?」
突然私の前に現れる。
この人はいつも本当に突然だ。
「探した?じゃないから!」
「ごめんごめん、」
寂しそうに笑って謝る。
いつもなら流していたかもしれない。
でも、今日は少し様子が違って見えたんだ。
「ねえ、いつもより元気ない?」
それを指摘すると一瞬驚いた顔をしたから。
その反応で、当たっているんだとわかった。
「さすが。すごいね。」
ほら、無理して笑ってる。
「ごめん。君に言わなきゃいけないことがある。」
真剣な顔をした貴方の、言いたいことは多分。
もうとっくの昔に気が付いていたと思う。
君は、見ていてわかりやすい。と思う。
でも今の俺には、今の君が読めない。
どうしてそんなに優しく微笑んでいるの?
「俺は、人間じゃないんだ、
…ずっと黙っていてごめん。」
君は驚くだろうと思ったのに、驚いてないみたい。
表情を変えず、ただ俺の話を聞いている。
まるで、知ってたみたいに。
「君に関わったらいけないことは分かってる。
けど、好きなんだ。雨衣ちゃんのことが。」
想いを告げると君の瞳からぽろぽろと涙が溢れる。
儚くて、すぐに消えてしまいそうで、触れたくなった。
でも出来ない。君の前から姿を消さなきゃ、
「………行かないで、まってよ、」
君はわかりやすいと思っていたけれど、
わかりやすいのは俺の方だったらしい。
人間じゃないことまで気が付かれてる上に、
居なくなろうとしたことまでバレてしまった。
「私は、!空と一緒に幸せになりたいの!」
君は少し怒っているように見える。
「人が人じゃないかとかどうでもいい。
なんだっていいから、だから、ずっと隣に居させてよ…」
「後悔しない?」
君は深く深く頷いた。
いつも他の人ばかり優先している君が、
ここまで自分の気持ちを言ってくれるのなんて
初めて見た気がした。
「後悔なんてしない。
このままバラバラになる方が絶対後悔する、」
嬉しかった。君がここまで想っていてくれたなんて、
思わなかったから。
その気持ちに応えなくちゃと思えた。
「俺、我慢しないよ?」
「うん。」
君は腕で涙を拭ってから、にこり笑った。
影が重なって、もう戻ることは出来なくて。
触れる度に君が欲しくなった。
いつか見た首の紅い跡は、もうすっかり消えていた。