第60章 【家庭教師の先生】×【運命】
「俺だったら言えないかな。
居るとは言うけど、誰かまでは言えないかも。」
意外だった。何となく、言ってしまいそうだったから。
なら私はその逆を行く。
先生みたいにしたら、後悔してしまいそうな気がした。
別に関係が壊れたって構わなかった。
運命は残酷かもしれないけど、
それによって得ることもあるかもしれない。
新しい恋に進めるかもしれないから。
「なら私は言います、その人に。」
「そっか。」
先生は、まだ私の方を見てはくれない。
視線は私のノートに向けられたまま。
「私は空先生が好きです。」
「……え?」
驚いた顔をして、やっと私の方を見る。
「応援してくれるのは有難いですけど…
先生が好きになってくれなきゃ意味がないので。」
冷静を装うのに必死だった。
先生はそんな私の心を、やっぱり簡単に乱す。
「……あの、近い、です」
さっきまで人のノートを真剣に見てたくせに、
今度は私の方を見て、逸らしてくれない。
「先生……?」
「っ、ん、!」
ぐい、と強引に体を寄せられて、唇を奪われた。
そして離せば、いつもみたいに笑った。
どうやら私の心を乱すのはいつだってその表情らしい。
でも、いつもとは少し違ってて。
どこかその顔は、照れて赤くなっているように見えた。
「応援するんじゃなかったんですか?」
「諦めようと思ったんだけど、無理だったみたい。」
少し困った顔をする。そんな顔初めて見た。
それが嬉しくて、今度は私からキスをした。
先生は嬉しそうにした後、真剣に私に言う。