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色々彼氏 。【短編集】

第60章 【家庭教師の先生】×【運命】


「……運命か…」

素敵だけど、運命って残酷だ。
それは多分幸せなことだけじゃないから。

「ただいま。」

家へ帰ると玄関であの人の靴を見かけた。
あの人と言うのは、家庭教師の先生だ。

そして私の片想いの相手でもある。

手を洗って、先生がいつも居る部屋へと向かう。
やっぱりここに居た。

「今日は早かったですね。」

いつもは私より遅いのに、不思議だ。


「お帰り。喜んでくれるかなと思ったんだけど…
嫌だった?」

ニコニコと笑って平気で私の心を乱す。
なんて言うか、ずるいっていうか。

私の気持ちに気付いているのか、
気付いていないのかも分からない。

「嫌じゃないですけど……」
「そっか、良かった。」

自分にだって好きな人がいるくせに。
見ていると、好きな人に好きな人がいることだって
簡単に分かってしまうから。

「なんか、変な感じするね。
雨衣ちゃんにお帰りって言うなんて。」

もしも一緒に住んだりしたらこんな感じなのかな。
どうせ叶わない恋なんだから、
想像くらいしたって許されるはずだ。

……まぁ、悪くは無いかもしれない。

これからずっと、お帰りって言ってくれればいいのに。

「………勉強、教えてくださいよ。」
「うん、そうだね。」

勉強はそんなに嫌いじゃなかったから
勉強をしている時だけは先生が好きな事を忘れられた。

先生をただの先生として見ることができた。

なのに、

先生は私の気持ちを考えもしない。

「雨衣ちゃんって、好きな人は居ないの?」

今の私にとって、それは禁断の質問だった。
なんて答えればいいのか分からなくなり
勉強への集中力が途絶える。

「聞いてどうするんですか。」

冷たい返しだったかもしれない。
でも上手い返しが思い浮かばなかった、

下を向いたまま、先生は言った。

「応援しようかなって。
……ほら、なんかあったらアドバイス出来るでしょ?」

悩む私と違って、なんだか能天気な先生だ。
そんな先生を好きになる私も能天気なのかもしれない。

「じゃあ、」

「先生なら好きな人に好きな人が居るのか、
とか聞かれたらどうしますか。」

なんていうか。ムカついたから困らせたくなったんだ。
だって自分の好きな人に応援するなんて言われたら、

誰だって嫌でしょう?

だから仕返し。
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